がうす通信第53号(2002/02/18)


図書館の盗難防止装置でペースメーカー誤作動
国内初、「電磁波」原因を特定

2002年1月18日朝日新聞

報道にあった通り、図書館や店舗などの入り口に設置されている「盗難防止装置」の強い電磁波で実際の被害があったことが明らかになった。
80歳代の女性が図書館の出入り口をゆっくり通った際、埋め込み型心臓ペースメーカーのプログラムがリセットされ基本設定に戻ったというもの。このことが厚生労働省から報告された。女性に自覚症状はなかったものの、つき1回の定期健診の際に判明した。その後、東京都内の医療機関の担当医が図書館に同行しリセットを確認。6月に輸入販売業者の「日本ビタロン」が同省に報告した。2000年6月にも原因特定はできなかったものの、同社製品でリセットの報告が1例あった。(朝日新聞1月18日より) 

【読売新聞ニュース速報2001年8月2日抜粋】
 不整脈の研究者で作る「日本心臓ペーシング・電気生理学会」(JASPE)で電磁波干渉の事例が報告された。
99年11月、女性(当時74歳)が装着していたペースメーカーが、設定と異なって作動した形跡が点検時に見つかった。女性に自覚症状はなく、機種にも異常はなかった。電池の残量も十分だったため、電磁波干渉の可能性が浮上。女性が図書館を利用していることがわかり、そこに設置された同装置が干渉源との見方が強まり、医師が実験したところ、同じ状況になることが確認された。
盗難防止装置は、ラジオ波の「電波式」、金属探知機と同じ「磁気式」、電波と磁気の併用型「音響磁気式」の3タイプがあり、主に周波数は15―60キロ・ヘルツ。量販店や図書館などにも設置され、全国約1万4,000店のCDショップやレンタルビデオ店の普及率は9割に達している。


子供を脅かす盗難防止装置
ガンディ博士が警告

 ユタ大学(アメリカ、ソルトレーク市)のガンディ博士は、盗難防止装置が出す電磁波が小さな子供の健康を脅かしている危険性があると警告している。博士によると、子供の脳や脊髄が浴びる電流の大きさは大人の数倍にも及び、中枢神経系組織への影響を配慮して作られた安全基準を超えている可能性が高いという。
その原因として、ガンディ博士は、子供は身体が小さいので、大人の腰の位置にくる盗難防止装置のもっとも強い電磁波を頭の近くで浴びてしまうからだと論じている。例えば、150μT(1.5ガウス)の磁場をもち、30kHzの周波数で作動する盗難防止ドアの場合、博士が計算した最大誘導電流の値は、5歳児の脳で98.9mA/u、10歳児では64.6mA/uで、両者ともICNIRPで定めた60mA/uの基準を超えている。大人の脳への誘導電流は、同じ装置で17.6mA/uとなる。
ガンディ博士と弟子のガンカン博士は、これらの計算について「医学生物物理学誌」(Physics in Medicine and Biology)11月号で発表した。(PMB,46,pp.2759−2771,2001)しかし、ガンディ博士はマイクロウェーブニュースでのインタビューで、コンピューター上ではじき出されたこれらの数値は、実際の危険度というよりは、危険の可能性のある指標と考えるべきだと主張した。実際の盗難防止装置からでている電磁波の強さも明確にされていないし、コンピューターモデルの理論値が正しいかどうかも解明されていない。そもそも装置の理論上の電磁波を計算するために用いられる係数は、メーカー側に不利にならないように設定されていると博士は語る。それでもなお、ほとんどの盗難防止装置の電磁波がICNIRPの危険値を上回っているだろうとガンディ博士は論文の中に書いている。
この研究結果は英国で注目を集め、2001年10月はじめにはPMBを出版しているロンドン物理学研究所が、盗難防止装置のメーカーに電磁波の強さに制限を設けるように要求した。
58kHzで作動する音響磁場装置を作っているフロリダ州ボカ・ラトンにあるSensormatic電子工学会社は、すべての自社製品に対してICNIRPの電磁波基準をはじめとする国際的に採用されている基準に従うことを公表した。
ニュージャージー州トロフェアにある検査機器会社の調査開発副部長ジョン・デーヴィスは、ほとんどの自社製品は8.2MHzに設定されていて、ガンディ博士の設計したモデルよりもずっと低い基準を採用していると述べた。デーヴィスは、使用する電波の強さは他の電気部品との兼ねあわせを考慮して、低く抑えなくてはならないと説明している。 
以前からも、盗難防止装置が心臓ペースメーカーの誤作動をおこす可能性があることは、すでに懸念されていたことである。(マイクロウェーブニュース 97年9・10月号、98年11・12月号)


図書館の盗難防止装置から1890ミリガウス

 2001年夏にサンパウロで開催された生体電磁気学会で、図書館やスーパーマーケット、商店などの防犯装置についての研究報告が取り上げられた。研究者たちは、盗難防止ゲートを頻繁にくぐる店員や図書館員に関心を示した。また、レジで商品を扱う店員の手に大量に曝されるパルス(変調電波)や、図書館の本の磁気ラベルに用いられているパルス信号にも注目した。何種類かの防犯ゲートの脚部付近では189μテスラ(1890ミリガウス)以上の電磁場が観測された。図書館における磁気は50μテスラ(500ミリがウス)の磁場を作り出した。この研究はフィンランド放射線核安全庁がKuopip大学の協力を得て実施した。
盗難防止システムには、通常次の3タイプがある。超低周波(ELF)によるもの、高周波(RF)によるもの、音響磁場によるものである。音響磁場システムだと例えば58kHzなどの波長の長い周波数が使われる。これに対して高周波システムだと1から10MHzの間の周波数が使われる。どの装置も商品タグが発する信号に盗難防止ゲートが反応して特有の周波数の信号を送る。
これらの盗難防止システムは別名「電子商品監視装置」あるいは"EAS"と呼ばれている。

"SPICED TEAS"

 1995年フロリダのセントペテルスブルグ心臓医学研究所のミカエル・マクアイバーは、食料雑貨店の列に並んでいて、電子商品監視装置(EAS)の電磁波によって心臓に埋め込まれたデフィブリレーター(心筋細動阻止装置)に異常をきたした女性患者について報告している。文献を検索すると、商店の電子商品監視装置(EAS)の電磁波によって心臓デフィブリレーターやペースメーカーに誤作動を起こした報告はたくさん見つかった。時にはこれらの電子商品監視装置が電磁波の影響のために設定を変えられたり、スイッチを切られていたところさえあった。そこで、マクアイバーの研究グループは、さまざまな機種の心臓デフィブリレーターやペースメーカーがタイプの異なった電子商品監視装置によって受ける影響を調べる研究に取り組んだ。これは「電子商品監視装置によって引き起こされる心臓ペースメーカーおよび心臓デフィブリレーターに関する研究」(Study of Pacemaker and Implantable CardiovErter Defibrillattor Triggering by Electronic Article Surveillance Devices)略して"SPICED TEAS"と呼ばれた。
この研究結果は1998年10月に「ペース調整と臨床電気生理学」(Pacing and Clinical Electrophysiology)として出版された。これによると音響磁場システムが特に問題があり、装置の前に立った50人中48人の心臓ペースメーカー患者に電磁波による症状が見られ、めまいや不整脈を訴えた人も多かったという。50人中8人は単に監視ゲートを通り抜けただけで症状が現れた。これに対し、この研究によると、高周波システムはこれらの心臓装置に何の影響も与えなかった。
 マクアイバーは、音響磁場システムの防犯ゲートはペースメーカー器具に3.7Vの電流を誘導しかねないと説明している。それは、その装置が心臓鼓動に要するたった10mVほどのペースメーカーの電流を感知するように設定されているからであって、そういう条件下では心臓機能に変調をきたすことは十分予想できると述べている。

厚生労働省の報道発表
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/01/h0117-3a.html#3