リニア・市民ネット リニアは夢の乗りものか〜リニア中央新幹線計画を問い直す
 
 
 

JR東海の財源・採算性

◆財源問題

  • リニア中央新幹線計画では、どこがどのようにお金を負担するのですか?また、その予算規模、開業時期を教えて下さい。
  • リニアはJR東海が民間企業として国に援助を求めず、全額自己負担で計画を進めています。
  • 最短ルートで地元負担による1県1中間駅(地上350億円 地下駅2200億円)を前提

 予算は東京―名古屋間(5.1兆円)で2027年(平成39年開業−現在計画より2年延期)、東京―大阪間で8.44兆円で2045年(平成57年)開業を目指しています。

  • 建設費は5.43兆円? 本当にそれでまかなえるのでしょうか?
  • 断定はできませんが、Cルートでは難易度が最も高い南アルプス直下の掘削工事の難行が予想されること、建設工事中の金利が4000億円程度発生する等、工事費の増加は避けられないと思われます。
  • 建設費圧迫要因:都市部の「大深度地下利用」も含め、全線約80%がトンネルといわれています。

 特に大きな建設費圧迫要因は、東京、名古屋、大阪への乗り入れのためには、大深度地下敷設(地下40m以下)が不可欠であり、その延長距離も相当長くならざるをえないという点です。土地買収費、補償費、廃土処理費等の用地関連費の他、設備費、車両費、工事長期化に伴う建設中金利等を勘案すると、総工事費の圧縮は必要ではありますが、高速道路や地下鉄建設の比較において、JR東海の試算は相当甘いと言わざるを得ません。

  • 中央新幹線という大規模プロジェクトが、「リニア方式」「JR東海一企業の自己負担」で採算がとれますか? またJR東海の経営力は万全なのでしょうか?
  • 現在の需要見通しと建設費見積もりを前提に着工すれば、早晩大幅な計画修正を余儀なくされ、収支と財務内容の悪化で開業後の経営破たんを招く恐れもあります。
  • JR東海は、東京―大阪間開通後は、年間利用者は2.01億人(現在1.38億人)に増加し、リニア中央新幹線利用者が1.05億人(その内東海道新幹線からの転移は全体の62%)と想定しています。人口減少の中で、現在の東海道新幹線の1.5倍の客がいなければ、単純に考えて採算がとれません。

・リニア中央新幹線は一社だけの設備投資規模としては限界を超えており、経営リスクも大きすぎます。工事途中での計画修正や工事費圧縮は不可能であり、何とか開業できたとしても初年度から赤字経営は不可避と予測されます。新規需要は期待できず、東海道新幹線からの利用者転移だけでは赤字は必至です。

・大動脈輸送を2重系化しリスクに備えたい

 また、需要低迷時代に東海道新幹線、リニア中央新幹線と2線の併営は自滅行為です。従ってリニア開通直後から在来新幹線の改修工事と名古屋―大阪間の延伸工事に着手する企業体力は到底見込めません。

  • JR東海は膨大な長期債務(借金)を抱えながら、返済の見通しも不明確です。

 東海道新幹線の買取により、JR東海が抱える長期債務残高は、現在約3兆2000億円です。平成8年(1991年)から平成21年(2009年)まで18年間の返済額は、約2兆2000億円です。このペースで返済するとあと26年かかります。リニア計画を進めるには、平成28年には完済しなければなりません。
 JR東海は膨大な借金を抱え、脆弱な財務体質です。日本航空は2兆3000億円の負債で経営破たんしました。JR東海も「第二のJAL」になりかねません。

  • リニア中央新幹線の実用化に向けて巨額の資金負担を長い年月を覚悟して取り組む以上、失敗が許されません。

<これまで安易な計画で失敗した公共プロジェクトの例>

東京湾横断道路、本4架橋、成田空港、関西国際空港、諌早湾干拓、中海干拓、長良川河口堰、八ツ場ダム、英仏海峡トンネル、超高速機コンコルド、ドイツリニア鉄道建設計画

 

◆事業内容の検証

  • JR東海のリニア計画の理念と目的とは?

1. 東海道新幹線の輸送力が限界に近いのでバイパスが必要である
2. 東海道新幹線の老齢化で大改修がいずれ必要である
  (開業46年目)
3. 大幅な高速化、時間短縮が求められている

計画者側は、1、2を中央新幹線必要論の、また3をリニア必要論の根拠としてきました。

>>目的1 輸送力は限界か

  • 少子高齢化の時代、「東海道新幹線の輸送力」は本当に限界ですか?
  • 決して限界ではありません。JR東海側も顕著な収益と利用者の減少により、リニア計画の大前提である「東海道新幹線の輸送力の限界打破」の旗を降ろし、開業も2025年から2027年に2年延期しました。
  • 需要はこの20年間ほとんど増加しておらず、最近3年間の営業成績を見ても、輸送人員、座席稼働率、輸送収入、純損益とも下記の表のように急速に悪化しています。

<東海道新幹線の最近の営業実績の推移>

年度

19年度

20年度

21年度

輸送人員(千人)

151,321(4.2)

149.165(−1.4)

138,030(−7.5)

座席稼動率(%)

64.7

61.2

55.6

輸送収入(億円)

10857(4.1)

10641(−2.0)

9736(−8.5)

純損益(億円)

1597(22.7)

1260(−21.1)

917(−27.2)

※出所 JR東海有価証券報告書
 注:( )内は対前年度比を示す。純損益は在来線を含む全社ベースを示す

 東海道新幹線の輸送量は、1991年からほぼ横ばいが続いています。また、最近では不況の影響も重なり、輸送効率が約10%減少しています。東海道新幹線はラッシュ等を除くと空席が目立っていました。
 そのような状況下で、目的1を降ろしたということは、将来需要の増加を計画の前提とはしない、できないということを認識したということでしょう。その意味は極めて大きく、需要見通しの下方修正は一般の企業なら当然供給能力、投資規模を縮小しますが、JR東海はその点について政府、審議会等に何ら説明していません。

  • 少子高齢化時代を迎えた日本にとって、今後リニアの需要はあるのでしょうか?
  • 今後少子高齢化が進み、人口が減少します。少子高齢化、生産年齢人口の減少、企業の海外生産シフト等の経済社会の構造的変化の中で、将来長期にわたって東京・大阪間の新幹線需要が着実に増加する根拠はどこにもありません。

 新幹線の利用が多い15〜64歳の年齢層では、現在からリニア開業予定の2025年頃には約13%、更に大阪までの延長開業予定の2045年では約35%も減少するのです。JR東海は、東海道新幹線の輸送量が右肩上がりで上昇することを前提として、リニア計画を立てています。審議会にても、リニアの経済効果面を強調し、人口減と需要予測について、JR東海は十分に取り組んでいないという見解を明らかにしています。

>>目的3 大幅な高速化・時間短縮

  • リニア中央新幹線では、東京と名古屋を最速40分、東京と大阪を最速67分で結ぶことを想定していますが、国民がこれ以上のスピードアップ=到達時間短縮を必要と思っているのでしょうか?
  • そうした市場調査の実施も実証データも全くありません。朝日新聞甲府総局が2009年に行ったリニアルートのアンケートによると、半数以上の56.8%の人が「リニア必要なし」と回答しています。これ以上のスピードアップを社会が望んでいるとは思えません。

・ 現在、新幹線のぞみ号で東京〜名古屋間は約1時間40分、東京−大阪2時間25分です。JR東海はリニアによる時間短縮が必要と主張しています。しかし、「新幹線では時間がかかりすぎる」と不満を抱く人がいるのでしょうか?
・ 高速化に対する潜在的ニーズはある程度存在するでしょうが、利用者がリニア中央新幹線を選好するかどうかは、移動所要時間の短縮以上に料金に大きく依存します。建設工事費が膨張すれば料金水準を上げざるを得ません。しかし、高い料金を設定すれば逆に明らかな需要が縮小するというジレンマに直面します。

  • 利用者が鉄道に求めるのは、1 安全性、2 利便性、3 快適性、4 低廉性、5 定時性、6 高速性の6つとされますが、在来新幹線との比較におるリニアの評価を教えて下さい。
  • リニアは定時性、高速性を除けば、下記の点においていずれの条件も在来新幹線より相当劣っています。

<リニア中央新幹線の問題点-1、2、3、4において低下>

1 安全性(電磁波、無人運転による遠隔制御、異常時対応・救出策)
2 利便性(リニア駅へのアクセスの低さ。それに伴う利用者数の限定)
3 快適性(トンネル走行で車窓が全く楽しめない。電磁波被曝に対する不安
  ※南アルプスルートの場合:81%地下走行、19%電磁波防御のフード内走行)
4 低廉性 工事費が大幅増加した場合、運賃の大幅値上げは避けられない
  (20〜30%?計画側は10%程度を想定)
5 定時性
6 高速性 東北新幹線は320km/h時代に入っている。最高時速500km/h、平均時速400km/hの  リニアとの違いを利用者がどう評価するかが問題。

>>目的2 東海道新幹線の老齢化・大規模改修

  • リニア以外にどのような代替案が考えられますか?
  • JR東海にとって死活的課題は、何と言っても世界最高水準をゆく東海道新幹線の安全な営業運転を長期的に維持することであり、ここに最優先で同社の経営資源を集中的に投入すべきです。
  • JR東海は、リニア中央新幹線開通後平成30年〜平成39年度の10年間を東海道新幹線の大規模改修計画として予定していますが、リニアに頼らない代替策は考えられます。
     東海道新幹線の大規模改修中は、工事工法を工夫したり、代替輸送として東海道線に特急列車を走らせたり、区間を区切って半日程度運休として集中工事を行えば、リニアに頼らなくても可能です。

 東海道地震がリニア開業の2027年まで待ってくれる保証はありません。そのためにも大地震に対する抜本的対策を含めた改修工事に早急に着手し、一日でも早く経営基盤を確立することがとるべき最善の経営戦略でしょう。もちろん改修工事による長期運休は避けなければなりませんが、最善の工法を検討し集中的に進めれば決して不可能でありません。週末の深夜から翌日午前中までの集中工事を定例化する方法、取り換えが必要な橋梁やトンネルもその区間だけ地下化する方法、並行在来東海道線との連携で順次改修工事を進める方法等も考えられます。その方が確実に投資コストも少なく、技術的にも信頼でき、環境にも柔軟に対応できて不確実性が大幅に低下します。

 

◆諸外国の取り組み

  • 新幹線は安全性、技術的信頼性がきわめて高く、輸出可能性は十分あるとのことですが、諸外国でのリニアの取り組みと反応はどうでしょうか? また、需要はあるのでしょうか?
  • 都市間高速鉄道建設に積極な諸外国(米、中国、ブラジル、インド、ベトナム等)でもリニア鉄道には全く関心がなく、導入の可能性は皆無です。日本の動きは世界の中でも孤立しています。
  • 日本に先行してリニアの実用化に成功したドイツでさえ国内の3つの建設計画がすべて連邦議会で否決され、欧州各国でも全く関心を持たれない状況下で、2008年についにリニア事業から完全に撤退しました。

 ドイツのリニア鉄道建設計画中止のケースも1つの参考になります。ほぼ日本と同じ1966年から開発に着手したドイツは、1980年代半ばに4年間にわたって走行実験(31.5km)を行いました。1993年から連邦議会は建設計画の検討を始めましたが、連邦運輸省の科学委員会は安全性、需要、財政計画を事前評価し、計画の実現可能性に警告を発しました。それにも関わらず連邦議会は1994年にハンブルグ―ベルリン間(292km)の建設を決定しましたが、2004年に再評価した結果計画を中止しました。最終的に計画が中止された主な理由は、1 高コストで、需要がそれほどないという経済的非効率性、2 在来線鉄道ネットワークとの結合が不可能で、利用者にとって利便性が低いことの2つに集約されます。
 現実を直視すれば、リニアが世界最先端の技術であり世界中に輸出できるという考えがいかに幻想で空虚なものかは明らかです。

 
 
   
     
 
イラストの説明